※本記事では低学年のお子さんへのおやすみ前の読み聞かせなどを想定し、原文よりもマイルドな(ハッピーエンドよりの)終わり方に編集しております。
むかしむかし、ある海のそばの村に、
やさしい男の人がすんでいました。
名前は、うらしまたろう。
毎日、海でお魚をとってくらしていました。
ある日、たろうが浜を歩いていると、
子どもたちが、カメをいじめています。
「やめなさい!かわいそうだろう!」
たろうは子どもたちを止めて、
カメをそっと海にもどしてあげました。
「ありがとう、うらしまたろうさん」
次の日、あのカメが海からあらわれて、
たろうに話しかけました。
「おれいに、りゅうぐうじょうへごあんないします」
カメのせなかにのったたろうは、
キラキラ光る海の中をぐんぐん進んでいきます。
着いたのは、海のそこにある大きなおしろ。
そこは、りゅうぐうじょう。
おひめさまの名前は、おとひめさま。
「ようこそ、うらしまたろうさん。たくさん楽しんでいってくださいね」
りゅうぐうじょうでは、
おいしいごちそうやおどりがたくさん。
たろうは夢のような時間をすごしました。
でも、ふと思いました。
「村のおかあさんは、元気かな。そろそろ帰ろう」
たろうが帰るとき、
おとひめさまは、ひとつのはこをくれました。
「これは『たまてばこ』。けっしてあけてはいけませんよ」
たろうが浜にもどると、
見たことのない村、知らない人ばかり。
「ここは本当にぼくの村なのか?」
通りすがりのおじいさんに聞いてみると、
「うらしまたろう?むかし、そんな人がいたそうじゃ…もう100年も前の話じゃよ」
びっくりしたたろうは、
思わず『たまてばこ』をあけてしまいました。
すると、中から白いけむりがふわぁ〜っ!
たろうの髪はまっしろに、背中はまがり、
あっというまにおじいさんになってしまいました。
たろうがりゅうぐうじょうで過ごしている間に、そとのせかいでは100年もの時間がたっていたのでした。そして、玉手箱にはその100年分のたろうのじかんがつめこまれていたのです。
たろうはもう昔には戻れないことに気づき、少しさびしくなりましたが、竜宮城でのやさしくて、たのしい思い出は心の中にのこっています。
たまてばこは、ふしぎなふしぎな、おとひめさまからのプレゼント。
りゅうぐうじょうでの思い出といっしょに、
たろうはその後も、心あたたかく生きていきましたとさ。
おしまい
親御さん向け:『浦島太郎』にこめられたメッセージ
『浦島太郎』は、
「やさしい行いはいつか自分にかえってくる」
「時間は二度と戻らない大切なもの」
というメッセージをふくんだお話です。
たろうのやさしさはカメを通して報われますが、
同時に、時間の流れや”戻れない過去”の切なさも描かれています。
寝る前に読み聞かせるときは、
「たろうはやさしかったね」
「思い出って大事だね」
そんなふうに、子どもと一緒に気持ちを共有してあげると、
やさしい心を育てるきっかけになるかもしれません。
コメント