むかしむかし、ある山のふもとに、おじいさんとおばあさんがすんでいました。
おじいさんは毎日山へ行き、竹をとってくらしていました。
ある日のこと、おじいさんが竹やぶでひときわ光る竹を見つけました。
「これはただの竹じゃないぞ」
そう言って切ってみると、なんと中から小さな女の子があらわれたのです!
おじいさんとおばあさんはとてもおどろきましたが、
「この子は天からの贈りものじゃ」
と、たいせつにそだてることにしました。
女の子は「かぐや姫(ひめ)」と名づけられ、あっという間にうつくしく育ちました。
その美しさはうわさになり、たくさんの男の人が「およめさんになってほしい」と家に来ました。
でも、かぐや姫は「私はおよめにはなれません」とやさしくことわります。
それでもあきらめない5人の男の人たちに、かぐや姫はそれぞれにむずかしいお願いを出しました。
かぐや姫が5人に出したお題は、
- にせものではない、「仏の石の鉢(ほとけのいしのはち)」を持ってきてください。
- 光る木の根もとにあるという「蓬莱の玉の枝(ほうらいのたまのえだ)」を取ってきてください。
- 火の中でももえない「火ねずみの皮ぎぬ(かわぎぬ)」を持ってきてください。
- 龍の首につけられているという「龍の玉(りゅうのたま)」を取ってきてください。
- つばめの巣の中にあるという「ツバメの子安貝(こやすがい)」を持ってきてください。
というものでした。でも、どれも手に入れるのはとてもむずかしくて、
ある男はうそをついて偽物を持ってくるもかぐや姫に見破られてしまい、ある男はあまりの難しさにあきらめたりして、結局だれも手に入れることができませんでした。
そんなある日、かぐや姫はとても悲しそうな顔で言いました。
「私は月の国の者なのです。もうすぐ月に帰らなければなりません…」
おじいさんとおばあさんはとてもびっくりして、
「月になんて帰らないで!」とお願いしました。
けれどもその夜、月から人たちがやってきて、かぐや姫は光に包まれて、
そらのかなたへと帰っていきました――。
おじいさんとおばあさんはとてもさびしくなりましたが、
かぐや姫との思い出は、ずっと心の中にのこったのでした。
おしまい
✨このおはなしのメッセージ
このお話は、「大切なものは、いつか手放さなければならないときがある」ということを教えてくれます。
そして、どんなに美しいものでも、かんたんには手に入らないこともあるのです。
でも、心の中に残る思い出は、ずっとずっと宝物になります。
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