『長ぐつをはいたネコ』読み聞かせ用原稿

読み聞かせ絵本原稿

むかしむかし、あるところに、年をとった粉ひき屋(こなひきや)がいました。
彼には三人の息子がいて、毎日こつこつ働いていましたが、あまりお金はありません。

やがて粉ひき屋が亡くなり、のこされたものはたったの三つ。

それは、うす(粉をひく道具)と、ろばと、一ぴきのねこだけでした。

いちばん上の兄は「うす」を、まんなかの兄は「ろば」を受けとり、
末っ子の三男には――ねこしかのこりませんでした。

三男はがっかりして、頭をかかえてしまいました。

「兄さんたちは、まだなんとか生きていける。でも、ぼくはどうすればいいの?
このねこを食べて、毛皮を売るしかないのかな……」

すると、そのねこが突然ぴょこんと立ち上がって、こう言いました。

「ごしゅじんさま、あわてないでください。
わたしをただの“ねこ”と思ったら、大まちがいですよ!」

「……え?」

「わたしに、長ぐつと ふくろをください。
それだけあれば、あなたをきっと幸せにしてさしあげます!」

「長ぐつ? それに、ふくろ?」

「ええ。長ぐつをはけば、人間のようにあるけますし、ふくろがあれば、いろんな作戦ができます!」

三男は半信半疑でしたが、「もしかしたら、このねこは本当にすごいのかもしれない」と思い、
さいごのお金で、ねこのために長ぐつとふくろを用意しました。


さっそくねこは、長ぐつをはいて、人間のように「とことこ」と歩き出しました。
ふくろの中には、にんじんや小麦を入れて――森の中でじっと待ちます。

やってきたうさぎが、ふくろの中のにんじんに夢中になっているすきに、
「パタン!」と袋をしめて、すばやくしばりました。

つかまえたうさぎをかかえて、ねこは王さまのおしろへ向かいます。

「これは、カラバ公爵(こうしゃく)さまからのプレゼントでございます!」

「カラバ公爵? そんな人がいたかな……まあ、うさぎはありがたくいただこう」

王さまは少し不思議そうにしながらも、うさぎを受けとりました。

その日から、ねこは毎日のように野原や森でいろいろな動物をつかまえては、
「カラバ公爵さまからの贈り物です!」と王さまに届けました。

もちろん、“カラバ公爵”なんて本当はいません。
ねこが、自分のご主人(三男)を高貴な人に見せかけるための名前だったのです。


しばらくたったある日、ねこはおしろの前でこんなうわさを耳にします。

「今日は王さまとおひめさまが、馬車で川沿いをおさんぽされるそうよ」

「……チャンスです!」

ねこはすぐに家へ戻り、ごしゅじんに言いました。

「いそいで! 川に入ってください! そして、だれかが来たら、助けをもとめるのです!」

「えぇっ!? なんで川に入らなきゃいけないのさ!?」

「いいから、ねこを信じて!」

三男はよくわからないまま、ねこの言うとおり川に入り、助けをよびました。

すると、ちょうどそのとき、王さまの馬車が通りかかります。

「たすけてくださーい! カラバ公爵さまが どろぼうに服をぬすまれてしまいました!」

ねこが大声でさけぶと、王さまはびっくり。

「それはたいへんだ! うちの馬車にある、いちばんりっぱな服をさしあげよう!」

こうして三男は、きれいな公爵の服を着ることができ、見た目もりっぱな紳士に。

それを見たおひめさまは、ぱっと顔を赤くして、三男にうっとりと見とれてしまいました。


ねこは「作戦は大成功だ」と思いながら、すぐに次の準備にとりかかりました。

王さまは、すてきな“カラバ公爵”の家を見たいと思うかもしれません。
でも、三男にはおしろも、お屋敷もありません。

そこでねこは、近くに住んでいた こわ~い魔法使いのことを思い出します。

その魔法使いは、大きな おしろにすんでいて、
自分の魔法で どんな動物にも変身できるという、とてもこわい相手です。

「でも、ここまできたら、やるしかない!」

ねこは、魔法使いのおしろをたずねていきました。

「こんにちは! あなたさまの力、かねがねうかがっております。
ライオンにもゾウにも、化けられるとお聞きしましたが……本当でしょうか?」

「ふん、見せてやろう!」

魔法使いはもくもくけむりを出しながら、ガオーッと大きなライオンにへんしん!

「ひえ~! すごい……」
ねこは、びっくりしたふりをしながら、今度はこう言いました。

「では、ねずみにもなれますか?」

「バカにするな! こんなのチョロいさ!」

その瞬間――もくもくけむりが出て、魔法使いは小さなねずみに!

「いまだっ!」

パクリ!

ねこは、すばやく ねずみをのみこんでしまいました。

こうして、魔法使いはたおされ、おしろは三男のものになったのです!


しばらくして、王さまの馬車がやってきます。
ねこは、おしろの前でにっこり言いました。

「ようこそ、カラバ公爵さまのおしろへ!」

王さまもおひめさまもびっくり!

「まあ、なんて立派なおしろ!」「やっぱりカラバ公爵さまはすごいわ!」

王さまはたいそう満足して、三男とおひめさまの結婚をゆるしました。

こうして、三男はおしろに住むことになり、ねこはそのすぐそばで、
毎日おいしいものを食べて、おひるねをするくらしを楽しんだのでした。


🐾おわりに

長ぐつをはいたねこは、ただのねこではありません。
知恵と行動力、そして少しのユーモアで、ごしゅじんの人生をすっかり変えてしまいました。

「今あるものをどう生かすか」「あきらめずに考えることの大切さ」――
そんな前向きなメッセージが詰まった、子どもにも大人にも人気のお話です。

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